1人が本棚に入れています
本棚に追加
だから、自分たちがうまくやることは、とっても難しいことだ、と思う。進一自身、彼らを甘く見すぎていつの間にか父親に取り入り、父が跡継ぎを変えることを考えだしたら、と思うと気が気でない。かといって全く他人でいるにはさみしいことだと思う。これでも、進一は兄弟が出来たことがうれしいのだ。
悩んでいたら、雅人がシャワーを浴びて出てきた。スマホを確認している。
「なあ、誠人のこのメール、なんて返せばいいと思う?」
尋ねると、雅人が兄弟グループLINEを確認したようだった。進一の見ているスマホ画面に「既読2」の文字が現れる。
「ふつうに返せば?」
「ふつうって? そもそも、兄弟で誕生日にプレゼント贈り合うのって普通なのか?」
「俺は兄貴からプレゼントなんてもらったことないけど」
「じゃあ、これも社交辞令なのかな」
「いや、聞いたからには、くれるつもりなんじゃない?」
「ど、どっちだよ……」
進一は情けない顔をする。
「社交辞令にしても、なんて返せばいいんだ?」
「欲しいものないの?」
「いくらくらいのものを言えばいい?」
「知らないよ」
雅人が面倒そうな顔をした。
「ネクタイとか? ボールペンとか? もう少しカジュアルなものの方がいいのかな」
「ほしいものでいいんじゃない? 何かないの?」
「ほ、欲しいもの……」
そんないきなり言われても。
「社会人なんだから、たいていのものは自分で買えるしな」
「社会人どころか、あんた、子どものころからどうせ何でも買ってもらえたんだろ」
最初のコメントを投稿しよう!