プレゼントをまよう

5/8
前へ
/8ページ
次へ
 だから、自分たちがうまくやることは、とっても難しいことだ、と思う。進一自身、彼らを甘く見すぎていつの間にか父親に取り入り、父が跡継ぎを変えることを考えだしたら、と思うと気が気でない。かといって全く他人でいるにはさみしいことだと思う。これでも、進一は兄弟が出来たことがうれしいのだ。  悩んでいたら、雅人がシャワーを浴びて出てきた。スマホを確認している。 「なあ、誠人のこのメール、なんて返せばいいと思う?」  尋ねると、雅人が兄弟グループLINEを確認したようだった。進一の見ているスマホ画面に「既読2」の文字が現れる。 「ふつうに返せば?」 「ふつうって? そもそも、兄弟で誕生日にプレゼント贈り合うのって普通なのか?」 「俺は兄貴からプレゼントなんてもらったことないけど」 「じゃあ、これも社交辞令なのかな」 「いや、聞いたからには、くれるつもりなんじゃない?」 「ど、どっちだよ……」  進一は情けない顔をする。 「社交辞令にしても、なんて返せばいいんだ?」 「欲しいものないの?」 「いくらくらいのものを言えばいい?」 「知らないよ」  雅人が面倒そうな顔をした。 「ネクタイとか? ボールペンとか? もう少しカジュアルなものの方がいいのかな」 「ほしいものでいいんじゃない? 何かないの?」 「ほ、欲しいもの……」  そんないきなり言われても。 「社会人なんだから、たいていのものは自分で買えるしな」 「社会人どころか、あんた、子どものころからどうせ何でも買ってもらえたんだろ」     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加