プレゼントをまよう

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「なんでも買ってあげる、っていうのがいちばん困るんだよ。自分が何を選ぶかっていうので、買ってもらう大人が自分のことをある意味で審査するからな」  今から思えばほんとうにどうでもいいことなのだけど、このひとは車よりも飛行機を選んだ方が喜びそうだな、という基準で、本当は車のおもちゃがほしかったけれど飛行機を選ぶようなこどもだった。  だから大人になって、自分の金で何でも買えることがとても風通しよく感じる。 「誠人は何を言われてもあんたのことをそれで評価なんかしないよ」 「だろうな」  それは、短いつきあいの進一にも断言できる。やさしいおとこだが、いっぽうでどこまでも他人は他人として一線をひくおとこである。 「じゃあ、雅人がもし誠人に同じことを言われたら何をねだる?」 「え……」  言われて、雅人は少し考えてから 「焼き肉に連れていってもらう」  と言った。 「焼き肉……」  若者らしい答えだと思った。 「なるほど、食べ物なら、後に残らないから気を使わなくてすむしな」 「そこまで考えてないけど」  ワインとか、そういうものでもいいのかもしれない。しかしワインだとしたら、どこまで指定したらいいのだろう、赤とか白とか、ドイツとかフランスとか、年数とか。 「ちなみに、もしおまかせって言ったら何をくれるとおもう?」 「焼き肉じゃないかな」     
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