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「…………皇帝陛下は、生まれ持った才ですべてが決まるこの世界を憂いていらっしゃるのです。だからこそ、自身が神になってこの世を平等に正そうとお考えなのです。それに、リアンジュナイルの連中は、才があるからと現状に満足し、自らの領地にあるあの塔を利用しようとは考えない。神の地に繋がるあの塔の頂へと登れば、きっと神に至ることができように、奴らはそれをしようとはしない。そうすればきっとこの世を正すことができるというのに、自分たちが良いからと、奴らはそれをしないのです。ならば、我らが代わりにあの塔を有効活用しましょう。……そして、そもそもこんな世界を作ったのがあの塔の上の世界にいる神だというならば、その神をも滅ぼし、我らが次なる神となって、この地に平等をもたらしてみせる」
「……ふぅん」
「……ウロ殿こそ、どうしてそうもリアンジュナイルの滅亡にこだわるのですか」
デイガーの問いに、ウロは首を傾げた。
「あれ? デイガーくんには言ってなかったっけ? 僕ね、とっても好きな人がいるの」
「……はぁ」
なんだっていきなりそんな話になったんだ、と思ったデイガーは間の抜けた返事をしてしまったが、ウロが気にした様子はなかった。
「あの人さぁ、いつも冷静で取り乱すことなんて全然ないんだけど、僕にだけは特別でね。僕がちょーっと悪戯するとね、本気で怒るの。あの、いつも穏やかな表情してる人がさ、そりゃもう、本気で怒るの。僕をさぁ、殺してやるって目で見てくるの。……はあ、思い出しただけでゾクゾクしてきちゃったなぁ。あの人の心を乱せるのは僕だけなんだよ。あの人にあんな表情をさせられるのは僕だけなの。だから、リアンジュナイル大陸を滅ぼしたいんだ。そしたら、あの人絶対に怒ってくれるもの。もしかすると、本気の本気で殺し合いができるかもしれない。それってとっても最高で気持ち良いと思わない? ね? 思うでしょ?」
「っ、」
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