千里眼の老婆

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「今回は公式に許可を得ての遠出だ。道中ちょっとしたトラブルに巻き込まれて帰りが数日遅れてしまったとでも言っておけば……」 「なんとかなるのかい?」 「いや、嘘を見抜かれて大目玉だな」  そう言って笑った王に、老婆がやれやれと溜息をつく。 「まあそんなことは良いんだよ。取り敢えずお座り。儂に用があってきたのだろう?……大方、あの眼帯の坊やのことかね」 「さすがに耳が早い。キョウヤをご存知か。それでは、現状の帝国の動きも把握しているのだろうな」  老婆の向かいに置かれた座布団に腰を下ろした王が、すっと真顔になる。  王がこの老婆に出会ったのは、かれこれ十五年以上前のことである。自身を千里眼の婆と名乗るこの老婆は、その名の通り、千里を見渡す目を持っているらしい。はたしてそれが本当に千里先を見ているのか、はたまたもっと遠くにも及んでいるのかは王も知らなかったが、少なくとも王がこうして訪れるとき、老婆は王の欲しい答えを持っていた。  今回も王は、天ヶ谷鏡哉の素性について老婆に尋ねようとやってきたのだ。円卓の十二国一の情報通である黄の王すらもエインストラについて有力な情報を持っていなかったため、残る手段がこれしかなかったのである。     
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