千里眼の老婆

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 王自身としては、この老婆の力を借りることはあまり好んでいなかった。別に、老婆を好いていないだとか、そういうことではない。ただ漠然と、この老婆は人ではない何かなのだろうと感じていたので、そういう類のものの力を借りるのが憚られただけである。  人には人の領分というものがある。それを侵すのも侵されるのも、本来の在り方から外れる行為だと、王はそう考えていた。  それを証拠に、王がこの老婆の力を実際に借りるのは、これが二度目である。何度か相談に赴くことはあったが、基本的に過去の一回を除けば、結局王は己の手で全てを解決していた。  だが、今はそんなことを言っていられない状況だ。そう判断しての訪問だったのだが、どうやら老婆は全てお見通しのようである。 「それでは単刀直入に伺おう。キョウヤはエインストラなのだろうか。そして、エインストラとは何者なのだろう」 「……訊くのは良いが、お前さん、それを円卓会議で話すつもりかい? 前にも言ったが、儂はひっそりと暮らしたいんだ。お前さんは儂の力を知っても利用しないから良いが、果たして他の王もそうだろうかね」 「……状況が状況だけに、諸王への報告は免れられないだろう。だが、円卓の王は皆王として優秀だ。貴女の力をむやみやたらに利用しようなどと考えるような愚か者はいない。もし万が一そうなったならば、そのときは必ず私が貴女をお守りしよう。だからどうか、お力添え頂きたい」     
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