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そう断言した王に、老婆はふっと表情を緩め、微笑んだ。
「知っておるとも。少し意地悪を言ってみただけだよ。……それじゃあまずは、お前さんが一番気になっていることに答えようじゃないか」
そう言って、老婆は机の上に置かれていたカップを口元に運んだ。
「あの坊やだけれど、恐らくは、エインストラであるとも言えるし、ないとも言える存在なんだろうね」
ずず、と茶を啜ってから言われた言葉に、王が首を傾げる。
「つまり、どういうことだ?」
「お前さんも薄々気づいているんじゃあないのかい? あれはね、一種の先祖返りだと思うよ。大方、先祖返りが起こることで右目だけがエインストラとして発現したんだろう。恐らく、あの子は遠い先祖にエインストラを持つだけのただの人間さ。だから、あの子自身に次元を越える能力などある筈もないと、まあ、儂はそう思うね」
そう言われたが、曖昧な表現で濁しているところを見ると、老婆自身確たる証拠があって言っている言葉ではないようだった。
「……仮にその言葉が真実で、キョウヤが純粋なエインストラではなかったとしても、エインストラの血が混じっていることにはなる」
王の言葉に、老婆が目を細める。
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