千里眼の老婆

7/16
前へ
/365ページ
次へ
「その通りだ。だから、お前さんたちからしたら厄介だろうね。儂も何もかもが判る訳じゃあないが、エインストラの血を使えば次元に干渉しやすいのは事実さ。仮にあの子が先祖返りだとして、薄れ切ったエインストラの血でどれだけのことができるかは知らないけれど、もしかするともしかするかもしれないからねぇ。それに、命の危機に瀕した生き物というのは、時に想像を凌駕するほどの何かを見せることもある。あの子を極限状態まで追い詰めれば、一度くらいはエインストラとしての力を発揮するかもしれない。……まあ、それも本当にあの子が先祖返りだったら、の話だけれどね」  老婆はそう言ったが、彼女がこうして話すということは、あの子供がエインストラの血を引いている可能性は高いのだろう。そして、その血が次元に干渉する手助けになる可能性も高いということだ。それどころか、場合によってはエインストラとして覚醒してしまう可能性すらあるらしい。 「……エインストラとは、それほどまでに強大な力を持つ生き物なのだろうか」  王としてはそれなりの回答を覚悟しての問いだったのだが、しかし老婆はやはり呆れたような顔をした。 「馬鹿を言うんじゃあないよ。あれにできることなんぞ、次元を越えることと、あとはせいぜい、万物の真の姿を見抜くことくらいさ。あれの役目は、神に地上の有り様を正確に伝えることだけだからね。例えば単純な力比べをするのなら、お前さんらの方が遥かに強い。特にこの地の人間は精霊に愛されているからねぇ。とてもじゃないが、エインストラでは太刀打ちできないよ」 「……万物の真の姿を見抜く、か」  呟き、王は僅かに目を細めた。     
/365ページ

最初のコメントを投稿しよう!

817人が本棚に入れています
本棚に追加