千里眼の老婆

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 万が一を想定して各国の王を筆頭にリアンジュナイル大陸全体の警戒レベルを上げてはいるが、赤の王を含めた諸王たちは、ドラゴンの召喚が現実的だとは思っていなかった。この地が神にとっての要の地である以上、絶対にこの地が滅ぶことは有り得ないのだ。だからこそ、仮に帝国がドラゴン召喚の手筈を整えたとしても、実際に召喚されることは有り得ない。何故ならば、あんなものは一度召喚されてしまえばもう人の手ではどうにもならないからだ。だからこそ、途中経過がどうあれ最終的に召喚は失敗に終わるだろう。それがリアンジュナイルの民の尽力によるものか、はたまた天災によるものかまでは予測できないが、そうでなければこの地が滅んでしまうのだから、そうなる筈なのである。  赤の王を以てしてもそう断ぜざるを得ないほどに、彼らの認識している神という存在は強大な何かであった。  確かな事実に基づいて発言した王に、しかし老婆は難しい表情を浮かべた。
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