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「ウ、ウロ殿! 私はまだ皇帝陛下に、」
慌ててデイガーが後ろを振り返れば、額に手を当てた皇帝が、もう片方の手で追い払うような仕草を返してきた。どうやら、退室の許可は貰えたらしい。
「ほらほら、皇帝陛下も良いって言ってるみたいだし、善は急げって言うでしょー」
そのまま謁見室を飛び出て、王宮地下に構えてある魔導実験所に向かって駆けていく。途中、城仕えの者たちと何人もすれ違ったが、ウロのこういった行動はいつものことなので、誰も咎める者はいなかった。
実験所の扉の前にたどり着いたところで、ようやくウロは走るのをやめた。ウロは全く息を乱していないが、まだ傷が完治はしていないのに走らされたデイガーの方は肩で息をしている。
「あらら、無理させちゃった? ごめんねぇ」
「いいえ、大丈夫、です」
デイガーが乱れた呼吸を整えるのを待ちながら、ウロは実験室の扉を開けた。
「しかし、皇帝陛下も頑張るよねぇ。そうまでして神様になりたいものなのかな」
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