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第21章 幸せになってはいけない
一刻も早くその場から立ち去りたい。そう思ってるのにひどく自分の足が重く感じる。足の裏がアスファルトの表面にべったりと貼りついてるみたい。焦る気持ちで一歩ずつ引き剥がすようにして歩き出しながらどこか遠い気持ちで考える。
こんなに足が前に進もうとしないのは。もしかしたらわたし自身、ここを立ち去りたくない気持ちがあるからなんじゃ。
このままリュウを一人、あとに置き去りにしてしまったら。多分これが最後、今生の別れになる。二度とわたしたちは顔を合わせることもないだろう。そんなのは嫌だ。とても承服できない。…ってのがわたしの本心なのでは?
重たい足の裏を必死で引きずりながら唇を思いきり噛む。でも、駄目。どっちみちもうわたしは彼のそばには戻れない。何でもない普通の日々はもう絶対に訪れない。
リュウに何もかも知られてしまった。わたしが身も心も既に汚れてることも。複数の相手との異常な、あり得ない関係に溺れていることも。
彼は二度と以前のままの目でわたしを見ることはないだろう。
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