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そんな風に優しくしてもらうわけにいかない。そんな資格、今この時点でのわたしにあるわけなんかないんだ。
神野くんはその意を何となく汲んだのか無理強いはしなかった。ただそのままわたしのすぐ後ろをついて歩いてる。返事の返ってくる距離感でそれがわかる。
「…高松くんと上林くんは?」
少し冷静な部分が戻ってきてやや普通の声で彼に尋ねた。神野くんは気を悪くした風もなく静かに答える。
「あのまま帰ったよ。…上林は成り行きが心配だし二人の話し合いが終わるまでどこかで待とうって言ってたんだけど。高松はここは君を信じて任せるべきだ、自分たちが介入する局面じゃないって」
「はは」
自然と力ないながらも笑みが漏れた。何だか、あの二人らしいな。そのやり取りがちょっと目に浮かぶ。
神野くんは感情を交えず事実を説明する口調で淡々と続けた。
「こんな場所だし帰りが心配なのは確かだけど。二人の話がどれだけかかるかも予測がつかないし。あのままあそこで決着がつかなくて結果何処かに腰を落ち着けるかもしれない。自分たちが焦れ焦れしてそれが終わるのを待ってても君の助けになるわけじゃないし、って主張して。あいつが」
わたしは微かに頷いた。それはそうだ。
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