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これはわたし一人の問題で、あの人たちを巻き込むのは筋が違う。ちゃんと自分自身で向き合うより他ない。
付き添いなんてあてにしてる場合じゃないんだ。
「全部自分の手で片をつけたいって君の気持ちを尊重しよう、って。あいつの様子からして君に危害を加えたりしないことは絶対的に確信が持てるから。ちゃんと眞名実が安全に帰れるところまで責任を持って見届けるだろうし、そこは信じようって言われて。あの男が君を大切に思ってることだけは悔しいけど間違いないからって」
「高松くんが言ったんだ」
「うん。…それで僕らは現地解散。ここまで来たらついでだから出版社に寄る、って言って抜けて来た。あの二人は幹線道路の方に向かったからやっぱりタクシーで帰ったんじゃないかな」
わたしはついちら、と彼のいる後方を窺った。
「高松くんと違って神野くんはわたしなんか信じられなかった、から?」
思わず本音のところが。ふらふらしてるしすぐ流されて相手の言うままになるし。彼に信用されてなくても全然びっくりしないけど。
俺と一緒にあの部屋に帰ろう、って縋るように懇願された。あのいつも余裕綽々に構えたゆとりある態度もかなぐり捨てて。不意に、今からでも踵を返してリュウのところへ戻りたいって思いで全身がいっぱいになる。
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