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そんなことしたら二人ともずたずたに傷つくに決まってるのに。取り返しがつかないことはもう起こっちゃってお互いにそのことを承知してる。そばにいればいるほどその事実がわたしたちの心をざくざくと刺し貫くだろう。
でも。リュウがそれでもいいって言ってくれるなら。わたしもそんなの構わなかった。
血を流しながらでもいいから。あの家であの人と一緒にいたい…。
「…そんなこと」
ぼそり、と呟く低い声にはっと我に返る。危ない、ほんとに。
リュウの必死の懇願にぐらついて。後先考えずにふらふらと元いた場所へ戻ろうとするとこだった。
胸の内で自嘲する。こんなんじゃ、わたしのことをよく知ってるこの人が信用ならないって考えても無理ないよな。
「そういうわけじゃ。…まあ正直それがゼロってこともないけど。それより、単に心配だったから。眞名実のこと」
訥々とした、微かに温かみの感じられる口調。
「高松はああいうけど。僕はちょっとそこは怪しいなと思ったから。あの男のあの様子からして、話し合いの成り行きがどうであれ最後まで責任持って君を安全なところまで送り届けるほどの余裕ってないんじゃないかな、って気がして。いくら普段君のことを大切にしてても、こんな時に君に打ち捨てられたらショックで動けなくても無理ないし。どうせあいつをその辺に放ったままで自分はずんずん先に帰って来たんだろ?」
「…見てたの」
彼が静かに首を横に振ったのがわかった。
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