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その手のひらの少しごつい感触にどぎまぎせずにいられない。可愛い顔に似合わない節のある骨ばった大きな手。この手が今までわたしに何してきたか。しっかり身体は覚えてるもん…。
「眞名実。言いたいことあるならちゃんと、口にした方がいい。溜め込むと身体に悪いよ」
そんなこと言われても。柔らかい口調で重ねて尋ねてくる。
「…僕から言おうか?」
闇雲に頭を振って拒んだ。ここは。…わたしから、何か言わないと。
最後まで受け身のままは嫌。
思いきって早口でひと息に言い切る。
「あの。…今日神野くん、どうしても帰らなきゃ駄目?」
「は」
ぽかん、とした声出すな。結構勇気を奮ったのに。何なのその間抜けな反応。
「急にだとお家の方、心配するから…、無理か。でもあの。外は寒いし。今から帰るのも面倒…かな、と。だから、もし神野くんが嫌じゃなければ。…泊まってく?」
一瞬沈黙が走る。いたたまれず言わなくていいことまで口走った。
「あの、やなら。…別に何もしなくていいよ。ただ…、一緒に眠るだけ、とかは。それでも、無理?」
「…無理。それは」
電光石火、とはこのことか。
と思うくらい、あっという間に彼はわたしのそばに来た。テーブルの向こうから回って来た感じがしないくらい。テーブルの上に手をついて座ったままのわたしに顔を寄せ、覗き込む。表情の奥に潜むものを確かめたい、と言わんばかりに。
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