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「絶対に時間が全部何とかしてくれる。みんないつか、そんなこともあったなって落ち着いて振り返れる日がくると思う。今は考えても仕方ないことは考えない。頭空っぽにしてとにかく眠るといいよ。食べて、寝て、生活する。それさえできてれば何とでもなる。人生のどんな局面だって」
彼がポケットからICカードを取り出すのを見て、慌てて自分もバッグから定期兼用のカードを出す。うっかりしてたらもう改札だ。
そんなもたもたしたとろいわたしを包むように、彼はいつになく優しく後を続けた。
「僕は絶対に君から離れたりしない。眞名実を一人にすることはないから。時間がいくらかかっても待てる。だから、ゆっくり自分のペースで気持ちを整理するといいよ。無理やり心を捻じ曲げたり、嫌なものや見たくないことをどこかに閉じ込めて見ないふりをするよりそのまま自然にしておいた方がいい。…それが眞名実にとってどんなにきつくても。その間もずっと僕はそばにいるよ」
表面上、何ごともなかったような日常は続いていた。
しばらく前から元々リュウとは顔を合わせることもなくなってたし。それがそのまま、これからも永遠に続くってだけだ。この先どうしようとか、なし崩しに元の鞘に戻ってもなとか思い悩む必要もない。もう完全に終わったんだ、何もかも。考えても仕方ない。
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