19.提案

2/3
前へ
/107ページ
次へ
 私は、伊庭さんが一体何を言い出したのか、全く意味が分からなかった。 “今回の件で、みんな源五郎は女性だって思い込んだわけですよね。  だから、今度はこっそり僕がこのブログをそのまま引き継いで、僕の実際の毎日の子育ての様子を書くんです。今までと同じ調子で。  うちとARIONEさんちって家族構成がほとんど一緒で、夫婦はほぼ同年代だし子供は4歳息子と2歳娘で全く一緒だから、たぶん違和感なく入れ替われると思うんですよね“  私は声も出なかった。この人、ホントひどいな。 “そんな。また皆を騙すんですか?” “騙してないじゃないですか。男性が書くイクメンブログ。誰も騙してない”  他人をおちょくることを、全く悪いと思ってない。 “ウソがばれた以上、これから先、源五郎に絡んでくるのはバカしか残らないですよ。真面目な人はもう源五郎を褒めたり持ち上げたりすることはないだろうし。  でも、もし今後、これまでの経緯を知らない真面目な方がうっかり源五郎を褒めてしまって、それでバカから馬鹿にされるようなことになったら、その時にもう一度正体を明かして、バカに逆に赤っ恥をかかせてやればいいんです”  何を考えているんだこの人は。 “だって、今までだって寄ってたかって、自分は何も反撃を受けない安全な場所から、散々ひどいことを言われ続けてたわけですよね?それでこのまま「私は嘘つきでした、ごめんなさい」って自分だけが謝って静かに身を引くの、悔しくないですか?” “たしかに悔しいですけど” “いいんですよ、お金が絡むような話でもない個人の趣味のブログで、ネット上の顔も名前も知らない人になんて真面目に付き合わなくても。「信じるも信じないも、あなた次第です」の自由な世界なんだから。” “伊庭さん、結構ひどい人ですね” “ほめ言葉と受け取っておきます(笑)”  ダメだ、この人と話していると倫理観がなんだかおかしくなる。直にお会いして顔見知りになっていなければ、こんな人は信用できないといって、さっさと会話を切り上げているところだ。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

212人が本棚に入れています
本棚に追加