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“そもそも、伊庭さん時短勤務じゃないですよね?”
“時短勤務ではないですけど、それに近いようなもんです。気楽な仕事なんで”
伊庭さんの職業はいまだに謎なのだが、コンサルだかコーディネーターだか、よく分からない自由業みたいなことをやっていて、忙しい時は忙しいけど、自分で仕事の量を比較的コントロールしやすい仕事であるらしい。
だからこそイクメンなんてこともやれるんだ、普通のサラリーマンだったら日本でイクメンなんて絶対無理無理!と、以前に本人もあっけらかんと笑いながら認めていた。
“私、確かに源五郎のブログで性別は嘘ついてましたけど、それ以外のことは絶対に嘘をつかないって心に決めてたんです。だから、もし伊庭さんにブログを引き継いでもらうとしても、そこで嘘を書かれてしまうのは嫌ですね”
“嘘は書きませんよ。あなたと僕の生活や育児の中の、お互いに違っている部分には触れずに、似た部分だけを切り取って文章にするんです。でも、以前からずっと真面目によーく読んでくれている人だけは、「あれ?何か変わった?」って何となく違和感を感じられるような内容にします。”
“そんな器用なことできるんですか?”
“たぶんOK。でもまぁ、バレたらバレたで別に損はしないし。そもそも、バレても今度は嘘じゃないから怒られる筋合いもないわけだし。別に気にする事ないじゃないですか”
私は、自分の無いフワフワした人間だなと思う。
あっけらかんとしている伊庭さんの態度に接しているうちに、顔も名前も知らず、私に一円もくれるわけでもなく、むしろ言葉で殴りかかってくる無礼な人たちに対して一生懸命に義理立てをしている自分自身がだんだんとバカバカしく思えてきた。
ホント、何やってたんだろう自分。
別にいいじゃん、伊庭さんに全部おまかせして、自分はこのブログから手を引こうよ。
その方が面白いような気がしてきたよ。
“とりあえず、一晩考えさせて下さい。伊庭さん言葉が上手だから、ちょっと頭を冷やしてじっくり考えます(笑)”
私はそう伊庭さんに返信すると、いつもの家事育児のお仕事に戻った。
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