212人が本棚に入れています
本棚に追加
私は心が痛んで、思わず伊庭さんにメッセージを送った
“すみません、なんか袋叩きみたいになってますが大丈夫ですか?”
しかし当の伊庭さんはあっけらかんとしている。
“全然気にしてないですよ。気にするようだったら、こんな自分で自分の傷口に塩を塗るようなバカなこと最初からやりませんって。それにしても今まで、よくこんなの耐えられましたね。さっきから通知が止まらない。いつもこんな感じだったんですか?”
“いつもこんな感じでした。うんざりして最近は通知を切ってたからよくわかりませんが。他人からのメッセージ、いちいち読んでも全然意味ないですよ。どうせみんな同じ事しか言いません”
“ですよねー。でも、通知読まないにしても、本当にこんなの毎日やってたんですか?タフすぎて尊敬しますよ。うわーまた怒られた”
そうやって楽しそうにしてる伊庭さんも十分タフですよ、と私はメッセージを返した。
ブログが無くなった私は、なんだか気が楽になったような気がした。
なんだかんだ言って、毎日いろんな人から理不尽に誉められたり怒られたりする毎日は、確かに楽しかったけど、私のような凡人には荷が重かったのかもしれない。
巨大な魔物と大怪獣が殴り合いお互いの尻尾を喰らいあう、そんなネットの野獣世界で平然と暮らしていけるのは、伊庭さんみたいな頭のネジが何本か外れたような、モラルのブッ飛んだ人だけなんだ。
平凡な私はやっぱり「読み専」でいい。そして時々誰も見ていない「王さまの耳はロバの耳の理容師が秘密を叫ぶ箱」に向かって愚痴を吐き出すぐらいでちょうどいい。
伊庭さん、「源八郎のイクメンブログ」、楽しみにしてますよ。
――そんなことを思ってたら、隣の部屋で夫が「ええええええっ!!」と大声をあげた。その後に続いて「やったぁああ!」とか「すげえっ!」とか喜びの雄叫びが聞こえてくる。
隣の部屋に行って夫に「どうしたの?」と聞くと、夫は興奮した口調で言った。
「見ろよこれ!このゲンゴロウのアイコン!フォロワー3万人だぜ3万人!」
「……え?何それ?」
最初のコメントを投稿しよう!