1.夫はイクメン

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「ねー。おかあさん見てこれー。描いたのー」  四歳息子が、くしゃくしゃになった折り紙の裏に、クレヨンで何か絵を描いたらしく私に見せに来た。私は夕食準備の手を止めて、「そうなのー。なに描いたの?」と聞く。  子供はいつもお母さんに見ていてもらいたい。本当にささいなことでもいちいち私に報告してくるし、見たらほめてくれと全力でアピールしてくる。  正直、子供の報告にいちいち手を止めて相手していたら、連続した夕食づくりの作業がブツブツと中断されて効率が落ちることこの上ないんだけど、子供を無視するのは教育上よくないことだし、そもそもいくら私が無視しても、母親が振り向いてくれるまでは絶対に諦めないでギャーギャーと叫び続けて、最後は泣き出すのが子供。  だったら作業を中断させてでも、最初から話を聞いてあげるほうが、トータルでは結局一番効率的だったりする。 「おかーさん。ねー」  息子が私と話しているのを見て、二歳娘も寄ってくる。こっちはまだ会話が十分に成立しないので、何をしてほしいのか聞きだすだけで、息子よりももっと手間と時間がかかる。  もう、こんなことしてる時間はないのに……と、いつものことだけど私はうんざりした。
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