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”もったいないですよ。こんなに面白いのに。私は好きですよこういうの。”
あっさりと言ってのけたその言葉に、私は呆然とした。伊庭さんは平然と続ける。
”あと、せっかくですから、一度うちのセミナー見に来てくださいよ。以前にうちの代表がお誘いしてフラれましたけど、フラれた理由がやっと分かりました。
でも、もう性別を隠す必要は無くなったわけですから、こっそり来て頂けるとうれしいです。こういう状況になった以上、別に「源五郎」に何かをしてほしいというわけではないし、秘密はお守りします。
イクメンネットという団体もそのセミナーも内部は色々ありまして、時々は活動が空回りすることもあるし、うちの代表って結構イタい上滑りなことをしょっちゅう言ってるし、「何この意識高い活動?」と自分でも微妙だよなと恥ずかしくなる時はあるんですけど、私みたいにゆるく不真面目に参加してる人もいますし、いろんな人にお会いできてけっこう面白いですよ。遊びに来ると思って一度どうですか?”
すごいな、こんな嘘つきでも全然気にしないんだなこの人。何事も、面白いか面白くないかだけで判断してるんだな。そんなところはまさにネット上の「ハチロー」さんらしい。
そして、たぶん普段はいつも人にドッキリを仕掛ける側なんだろうなぁと思われるこのイタズラっ子みたいな人に、凡人の私が仕掛けたこのドッキリの種明かしをするのは、少しだけ快感だった。
“もう行ってますよ”
“え?”
“イクメンネットのセミナー、もう何度も行ってます”
“あ、そうなんですか?それは失礼しました。いつの回ですかね?”
“もう何度もお話もしていますよ、伊庭さん(笑)”
彼の実名を挙げたことで、伊庭さんは私の言っていることが冗談ではないことを悟ったようだ。ポンポンと調子よく返ってきていたダイレクトメッセージのやりとりが止まった。これは一体誰なんだろう?と伊庭さんはいま必死で考えているのにちがいない。
少し気の毒になったので、私は自分から正体を明かしてあげる事にした。
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