4.王様の耳はロバの耳

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4.王様の耳はロバの耳

 夜のうちに、2歳の娘が熱を出した。  私は携帯で上司に「明朝も熱が引かなかったらお休みを頂くかもしれません」と平謝りのメールを打った。明日は打ち合わせが2件あったけど、どれもキャンセルして後日資料を送ってもらうよう手配した。それほど重要な打合せではなかったから、私はまだ運がよかった。 「……うちの親に来てもらおうか?」  夫が気を遣ってそう提案してくれる。その気持ちはありがたいが、ハッキリ言って逆に迷惑である事をこの人は全く分かっていない。  私の実家は新幹線に乗って行くような遠いところなので、こういう時は頼れない。夫の実家は我が家から車で30分くらいのところにある。  夫の両親はとても感じの良い親切な人たちで、子供が病気の時は協力するよ、とありがたく申し出てくれている。それはとても助かるのだけど、厄介なのは義母が 「熱を出した子供を30分も車に乗せるのはちょっとかわいそうだから、私達があなた方の家に行って子供を面倒見るわ。体の調子が悪い時に慣れないおばあちゃん家に行くより、自宅で寝ている方が子供も安心でしょ」  という、まぁ大変ごもっともなご意見を言って下さる事だ。     
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