5.源五郎のイクメンブログ

1/4
210人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ

5.源五郎のイクメンブログ

 それからというもの、私はこの偽イクメンブログがすっかり楽しくなってしまい、せっせと毎日のように日々の育児の様子を書くようになった。  仕事と家事育児のすき間にできた少しの時間で書くしかないから、表現や言葉使いにこだわった長い文は書けない。でも、それが逆に私のような文章の素人にはちょうどよかった。 “うちの保育園、なぜか毎週木曜はお弁当持参の日。「お母さんの手作りお弁当を食べる日があった方がいい」って理由らしいんだけど、もうホントうんざり。っつーかウチはお父さんの手作りお弁当だけど。  俺は普段は五時半起きなんだけど、この日だけは五時十五分起き(涙)“ “せっかくの週末なので、今日の夕食は平日には絶対作れないロールキャベツ!  だけど!子供たち全然食わねぇよ!マジかよ!助けて!“ “今晩は嫁さんが泊まりの出張のため、俺のワンオペです。  まぁ、ワンオペとはいうけど、どっちにしろ嫁さんはいつも子供が寝る寸前くらいに仕事から帰ってくるので、夜は実質いつも俺のワンオペなんだが。  とはいうものの、朝のワンオペは厳しいなやっぱり……。  いつも俺、どっちかというと嫁さんに「もう少し子育て手伝ってくれよ」と思ってるんだが、いざ嫁がいなくなると、実は俺の気づかないところで嫁も色々やってくれてたんだなと気が付く。嫁さんに感謝しなきゃな。”  そんな感じで育児についての日々の不満をブログに書いていると、抱えているイライラを言葉に直すことで自分の考えが整理されるのか、気分がスッキリして冷静な気持ちに戻れるようになった。  このブログは公開して、世界中の誰でも自由に見られる状態にしている。でも、無名の一般人が始めたばかりのブログなんて、読む人は誰もいない。  私にとってこのブログは、こっそりと愚痴を吐き出してストレスを解消するための「一人カラオケボックス」みたいなものだから、別に読まれなくても全く問題はない。  読まれなくても全く問題はない。  ないんだけど……  いくつか記事が溜まってくると、他の人に見せて反応が欲しいなというちょっとした欲が出てきた。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!