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「でもまぁ据え膳なんとかって言うし、せっかくだからいただいとくか」
そう。引きずりこむならもっと深く、どうせなら、なにをしても許される暗い深海で遊ぼうじゃないか。セックスなんて消耗だ。罠にかかる気など毛頭ないが、気持ちのいい遊び自体は嫌いじゃない。それこそ一発ヤってすっきりすれば、この意味不明なもやもやだって治まるに違いないのだ。
ならば正々堂々、こちらから正面きって飛びこんでやればいい。
「上等じゃねえか。いくらでも受けて立つぜ」
俺は向き合うように身体を寄せると、ふたたびその唇を啄んだ。
「……ん、ぁぅ……」
「おいおい。こんな子供だましのじゃれ合い程度で満足してくれるなよ?」
鬼がでるか蛇がでるか。期待してるぜ、孤高の気高き人魚姫。倫理を逸したその場所で、どれだけ楽しませてくれるのか……。
「あー楽しみ」
横の小さな塊がもぞもぞと動きだす。ようやく、この呑気なクソ猫もお目覚めのようだ。
「……う、ぅ……ば……ちゃ、ん…………」
「…………ばーちゃん?」
呑気どころか、平和過ぎて色気のいの字も感じない。
「おい。こんな色男捕まえて、ばーちゃん、だと? 笑えねえ。犯すぞクソチビ」
そうやってシラを切るならそれでもいい。疼く身体を震わせながら、波間に隠れてじっと待っていればいい。俺は絶対、騙されない。
「あと少しだけイイコにしてろよ? 大口開けた人魚姫」
鱗に隠れたその正体、おまえの海でこの俺が暴いてやる――。
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