ーよんー

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 ぐるぐるとめぐる、あてのない()(こう)(たたか)う僕を(はた)()に、()(ざき)は胸の前で腕を()み、ひどく()()しそうに喉を()らした。 「おまえ、大丈夫?」 「だっ……大丈夫って、それはどういう……」  ()(くだ)すように(すが)めた(まぶた)をちらっと見かえし、その全身を(おそ)(おそ)るなぞり見た。白いバスローブを()()った()(ざき)は、わずかに髪の毛が湿(しめ)っていて、シャワーを()びたあとのような雰囲気だ。どうしてそんな格好(かっこう)なのか、とは……(こわ)くて()けない。 「どういうって、声、(うら)(がえ)ってるし」  (かる)く肩をすくめると、()(ざき)はふたたびベッドの(ふち)に腰かけた。 「なーんか、思ってたのと(ちが)うっつーか……おまえ、すげえ面白(おもしれ)えのな」 「お、面白(おもしろ)いだと! よくもまぁそんなことがぬけぬけと――」  いきり立つ僕を見て、()(ざき)(わずら)わしそうに舌を()った。 「あーうっせえ。()こすんじゃなかったぜ。()てるときは結構、可愛かったのに」 「はあ? 意味わかんないし。それにそっちが(わる)いんだろっ。勝手に、その……」  手の(こう)で、ごしごしと唇を(ぬぐ)った。(いか)りを()びた焦燥(しょうそう)は、徐々(じょじょ)に不安と羞恥(しゅうち)()()わって、胸の(おく)にじんわりと広がっていく。 「ほんの少し(かす)っただけだろ。()()じゃあるまいし、たかがあれくらいのキスでギャーギャーとわめくなよ。それともなに、(はじ)めてのちゅーだったとか?」 「……(ちが)うに……()まってるだろ」 「――だよな」  ()()なく言いやる()(ざき)を見かえし、僕はぐっと唇を()みしめた。
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