ーよんー

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「ま、そんなことは前から()ってたし、今だってそのほうが()(ごう)いいけどよ。伝言だかなんだか()んねーけど、(はる)()にあんな大口(おおぐち)たたいておいて、結局は『ホモでガリ勉の貧乏人』じゃねえか。けっ、反省して(そん)したぜ」  とっさについた(つよ)がりに、これほど過剰(かじょう)反応されるとは思ってもみなかった。だからといってそれを撤回(てっかい)するわけにもいかず、僕は口を(つぐ)んだまま、ただじっと()(ざき)の姿を見つめかえした。 「まぁ今はあの(ころ)よりも、ずっと楽しく勉強してるみてえだけど。実践(じっせん)こみで」  口角(こうかく)を上げた()(ざき)が、ベッドにたたずむ僕の身体(からだ)()()みする。頭の(さき)からリネンに(かく)れた輪郭(ライン)まで、ねっとりと()めなぞるあからさまな男の視線が(いや)だった。  勘違(かんちが)いさせるような(たい)()をとったのは僕のほうだ。なのに(けん)()(ふく)んだ()(ざき)(あつ)いまなざしが、思いのほか僕をひどく傷心(しょうしん)させる。  ……軽蔑(けいべつ)、した……かな。  それでもどこかほっとした。今まで見せた()(ざき)言動(げんどう)、それを考慮(こうりょ)してみても、キス以上のことをしたとは考えにくい。  ()(ざき)からしてみれば、僕と(かわ)わした口づけなんて本当に時間(つぶ)しとしか思ってはいなかったのだ。(ひま)だったから、からかいついでにちょっとキスでもしてやろう、とでも思ったのだろうか。  (くや)しい……。でも、当然といえば当然だ。
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