ーよんー

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 元来(がんらい)男を相手にする性癖もないようだし、あの()(ざき)(せい)()(ろう)が僕を……だなんて、なぜそんな()鹿()げた想像をしてしまったのだろう。少し考えれば、わかるのに……。  こいつが、血統書付きの()(ざき)が、僕みたいなの相手にするはずないじゃないか。  たかが数日間、退屈しのぎで(から)んだ玩具(おもちゃ)(ほだ)されるようなやつじゃない。手をふりかえしたあのときと同じ、ちょっとした気まぐれだ。額面(がくめん)どおりに(とら)えてしまえば、傷だけが深く残る。  あんな気持ち……あの一度だけでたくさんだ。  それに僕だって、こいつとどうこうなりたいとか、そんなの全然、思っていない。  それでも用心するに()したことはないだろう。いかなる理由で()(ざき)が僕に(かか)わってくるのか、その()()はわからない。でも結局、それも(たん)なる気まぐれ、気を(ゆる)したら負けなのだ。 「……なに」  (おも)い視線を(はら)うように()いかける。すると()(ざき)は、別に、と()()なく答えるも、どこか気まずそうに顔をそむけて(あご)をしゃくった。 「てか、いい()(げん)それ……服、どうにかしろよ」 「……服……?」  視線を()とすと、()()れた(うす)い胸板が視界に広がる。  ネクタイが(ゆる)んでいて、しかもワイシャツのボタンがはずれ全開(ぜんかい)になっている。そのうえ、はだけた服の(すき)()からわずかに乳首が顔をだして……。 「――わわっ。な、なん、なんで……っ」  一気に頭が沸騰(ふっとう)し、みるみると体温が上がっていく。(あたた)かく(ととの)えられた室温に(くわ)え、キスばかりに気をとられていたせいで、おのれの()なりは()(つぎ)だった。
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