ーよんー

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「……あの、さ……」  不思議だった。どうしてこいつは『その件』に()れてこないのだろうか、と……。  興味本位、あるいは(おん)()せがましく言ってくると思っていた。無神経に()()ってくると思っていた。なのに、いつまで()っても()(ざき)からそのようすはうかがえない。  僕の()びかけに()(ざき)はソファーの背に腕をかけ、ふりむきざまで、なに、と()いた。 「き……()(ざき)がここまで、(はこ)んでくれた……のか?」  僕がこうしてここにいる、そして同じ場所に()(ざき)がいるその理由……。 「だったら、なに?」  ()(ざき)はじっと僕を見た。相変わらずの強い視線に、心臓がどきんと()ねる。 「なにって……その……」  あんなところで(たお)れた僕を、この男はどう思ったのだろう。  脱力した身体(からだ)はひどく重量があるし、(はこ)ぶにもそれなりの力を(よう)するはずで……あ。 「もしかして、それでシャワー……()びた、のか?」  ()(ざき)は無言のまま、肩をすくめただけだった。瞬間、僕は自分が()ずかしくなる。  こいつは……()(ざき)(せい)()(ろう)は、僕が思っていたほど子供ではなかったのだ。 「そういうの、(さき)に言えよな……」  普段の言動(げんどう)と意味不明のキスはさておいて、()(ざき)はあのとき僕が(たお)れた要因(よういん)に、なにか()(おん)さを感じとっていたのだろう。そしておそらく、その()(だい)については僕が()りださない(かぎ)()みこんではこない。  なんだよ。ちゃんと、大人じゃないか……。
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