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居心地悪くもぞもぞとしていると、木崎は大きく嘆息し、ほんの一瞬、鼻で笑った。
「してねえよ。てか、したかしてないかぐらい、そんなのケツの具合でわかるだろ」
「そう……だけど」
やっぱりそういうものなのか。僕はほっとひと息ついた。その隙を縫って、木崎が苛立たしげに舌を鳴らす。
「処女顔かましてよく言うぜ。おまえってマジ、そういう手法なんだな。打算的っつーか……ま、いいけどよ。なーんか、ちょっとむかつく」
なにがどうして木崎が不機嫌になったのか、それはよくわからない。それでも僕は心の底から安堵していた。本当は、キスだけでも十二分に衝撃的な出来事なのだ。
「――で。余興はあとにとっておいて、だいぶ元気になったみてえだし、いい加減、腹減ったから飯食おうぜ。なにはともあれそれからだ。こうなったらルームサービスでいいな?」
「……え……」
その提案に困惑した。面倒をかけたことは事実だし、今回の悪ふざけは大目に見るより仕方あるまい。
「でも……」
あんなふうに逃げた僕に、木崎は腹を立てていないのだろうか?
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