ーごー

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ーごー

 ……なんだ。それで、か。  (なら)んだ料理を口へと(はこ)び、僕は()(ざき)の話をうわの(そら)にぼんやりと相槌(あいづち)をうっていた。なにがどうということもないが、気が()けたというか、これまでじたばたしていた自分がいっそ()鹿()らしい。(たし)かに、そういう()()ならさっさと()まして、僕のことなど綺麗さっぱり忘れたいと思うだろう。でもこっちは、あんなことまでされたっていうのに……。 「()()いか?」  赤ワインを(かたむ)けつつ、()かいに(すわ)った僕の目を見て()(ざき)がたずねた。僕は仔牛だか仔羊だかの柔肉を(ほお)()りながら、すごく、と正直に答える。  この姉弟をもって『たかがルームサービス』とは思ってはいなかったけれど、やはり僕の予想など簡単に()えてくる。()(やく)したけりゃ庶民に近づけと軽々(かるがる)しく思っていたが、もしやこの(くく)りの人種には、それはかなりの難題となる()(れん)なのかもしれない。 「すごく、なんだよ?」 「()()しいし、()(らく)」  まわりに気を(つか)う必要もないし、意味不明に()わなくなったカトラリーに(あせ)る必要もまったくない。最低、フォーク1本残っていれば、それこそすべて()としてもこと()りる。 「だったらもっと()()そうに()えよ。機械みたいに、規則正しく口だけ動かしやがって」  不満げに舌を()らす()(ざき)をながめ、僕はふたたび正直に答えた。 「本当に()()しいし、これが普通の顔だけど?」  しかし()(ざき)はあからさまにむっとした表情で、じっと僕を(にら)んでいた。
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