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それを思った彼女にはもう今の夫を愛してみようなんて感情は1ミリたりとも残されていたかった。
「別れましょう」
そういった彼女に彼は静かに俯きながらうんと一言いうだけだった。その表情は一瞬悲しさや寂しさを伺えるもののどこからか安心さえしているような表情だった。
さて、こうして二人目の夫とも離婚をしてしまったが、彼女は初めて夫がいる身としてほかの男性に見を差し出したその相手と付き合っているか、と言われたらそうではなかった。
彼女は気づいてしまった。
わざわざ付き合わなくとも幸せになる上に愛される方法……あるじゃん。
彼女は壊れてしまった。なにか嫌なことやストレスがたまれば夜の街に繰り出し色んな男性と一夜を共にするようになった。幸せや愛情をくれるのは一夜だけだけど満たされることには変わりない。
彼女は煙草やお酒と同じようにどんどんその行為に依存してしまうようになった。でも、時間が経つにつれ彼女の相手をする人はいなくなってしまう。歳をとりどんどん顔が老けてしまう彼女に今はもはや声をかけてくれる男性などいない。
「あぁぁあぁあ………っははは……」
彼女は人ではなくなった。
自分を満たしてくれる者はいなくなってしまった。最初は小さかった心の穴はどんどん大きくなって今はもう修復できないくらい身体中を黒で埋め尽くされてしまった。
幸せが欲しい
永遠の愛が欲しい
そんなことをいつまでも喚き散らす"それ"は誰よりも醜く、汚く、空っぽで、悲しくて、苦しくて、辛そうで、寂しそうだった。
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