愛に呑まれる

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緩やかな坂を登ると、幼稚園児や小学生に人気のちょっと大きめな公園があってそこをさらに真っ直ぐに行って見える信号から三つ目で右に曲がるとどこにでもある、閑静な住宅街に繋がっている。そして、その中には他の家とは違う一際大きいレンガ造りの一軒家がある。 そこにはふたりの若い夫婦が住んでいて、夫は大手企業の社長のご子息でだけどそんな名誉には取り付こうとせず自分から努力して仕事に取り組み、妻はそれを全力でサポートするように家事に取り組んでいた。 旦那が朝起きる頃に朝食と弁当を毎日欠かさず作り、仕事に行く時には玄関まで毎朝送る。 帰ってくる頃にはすぐにお風呂に入れるように毎日お風呂は欠かさずわいている。 その生活は誰がどう見ても理想的な夫婦像でその二人は近所の誰が見ても幸せそうなものだった。 だけど、それはそう長くは続かなかった。 暗くなったリビングのテーブルに一枚離婚届が置かれている。それを見て狂ったように泣き叫ぶ"元"妻がいる。 あれは雨の日のことだった。 「別れよう」 「俺は家から出ていくことにするよ」 それはなんの前触れもなく訪れた。夫が愛人を作り別れを告げたのだ。妻は嫌だと何度も抵抗した。出ていこうとする夫にすがり付いた。だが、それをいとも簡単に振り払われてしまった、彼の目は今までの暖かさなんてものはなくただただ冷たかった。 その日、妻は普通の女に戻り、夫は新しい妻の旦那と変わってしまった。
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