愛に呑まれる

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それから数年後、同棲していた二人だがそれから間もなくして籍を入れた。結婚式の時は仕事の同僚達が盛大に祝ってくれて彼女自身も涙が出るほどに喜んでいた。 が、どうだろう いつも通り二人で一緒に生活する中で彼女は今まで感じたことのない感覚を味わっていた。満たされないのだ。いつも通りに生活して楽しいはずなのにそれは一時的な感情に過ぎなくて、ふと我に返ると心は満たされなくて、更なる幸せ、快感を得て満たされたいと願っている自分がいるではないか。 彼女からくる感情は一つ。「飽き」だった。 彼女はいつしか、彼に理由をつけてはどこかに出かけるようになった。最初のうちは昼間だけ。それはどんどん時間帯を増やしていきひどい時は帰る時には朝になっていて彼女は記憶もなくすほど酒に酔って帰ってくるようになっていた。 それを彼は疲れた体で彼女を介護し面倒を見ていた。寂しそうな表情で、だけど彼女はそんなことを全く知らない。知ることも面倒になってしまっていた。 そして、彼女はついに絶対に自分はしないだろうと思っていたことをしてしまった。目が覚めると知らない部屋にいて自分は裸で寝ていて隣には見知らぬ男。いや、彼女はその人を知っていた。飲みに来ていた所で偶然仲良くなった人。夫とは違う大人な雰囲気を持っていていいなって思ってそしてしばらく一緒に飲んで…… それからは彼女は思い出すまでもなく今の状況をわかってしまった。夫のいる身でありながら違う男性に体を差し出してしまったという時事をこれでは前の夫と全く同じ、いや下手したらもっと最低なことをしてしまったではないか。 でも彼女は罪悪感を抱かなかった。むしろあれだけ嫌になってしまったはずの前の夫の気持ちがわかるようになっていた。 「あぁ、なんかもうどうでもいいかも」
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