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そう当然のように言い放つ辰巳には苦笑が漏れる。そのくせ案外望む質が高いから甲斐としては下手な人間を遣れないのが悩むところなのだが。
ともあれ一人ばかり希望に添えそうな人間を頭に浮かべ、甲斐は日程を聞いて辰巳との通話を終えた。否、終えようとした。
「分かった、ではまた改めてこちらから連絡す…」
『勝手に切ろうとすんじゃねぇよタコ』
こちらの話など最後まで聞こうともせず辰巳が言って、甲斐は僅かに顔を顰める。案の定辰巳が口にしたのは隼人との事だ。
『隼人と何かあったのか』
「何も…」
『はぁん? 何もなきゃお前が渋る筈がねぇだろう』
「最近隼人の調子があまりよくないだけだ」
極力、嘘を吐かないような言い回しで甲斐が告げれば、回線の向こうでため息が聞こえてくる。ふと、この機会に相談してみるのもいいのかもしれないとそう思う。辰巳には相談してもいいかもしれないと思っていただけに、向こうが気にしてくれているうちに話してしまった方がいいのかもしれないと。
時計を確認すれば、まだハヤトが戻ってくるまでには時間があった。甲斐は、重い口を開く。
「こんな事を言っても信じられるかどうか分からない話なんだが…」
『ああ?』
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