会長様は多忙につき。

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 それから甲斐は、その子供が安芸隼人(あきはやと)という名前である事を雪人から聞かされた。 「隼人には少し事情があってな。匡成おじさんのところから、うちで引き取ることにした。お前も、隼人が落ち着いたら仲良くしてあげなさい」  匡成おじさんと、雪人の口から出た名前を甲斐は知っていた。辰巳匡成(たつみまさなり)。たまに甲斐の家を訪れるその人は、昔からの知り合いだと雪人から聞かされている。少しだけ顔が怖いおじさんだ。 「事情? あの子、病気か何かなの?」 「病気……、そうだな、病気みたいなものだ…」  雪人の顔は何故か痛々しくて、甲斐は首を傾げた。使用人に連れられた隼人はすぐどこかへ連れていかれてしまって僅かな時間しか見ていなかったけれど、躰の具合が悪いようには見えなかったからだ。 「なら、病気が治ったら隼人はいなくなるの?」 「いや…、ずっと、うちで面倒を見るつもりだ。だから甲斐、隼人はお前の弟みたいなものだよ。血の繋がりはなくても、何かあったら面倒を見てやりなさい」 「分かった」  ”弟”と、その言葉にその時甲斐は顔を輝かせた。     
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