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ハヤトの言葉は、やはり自分は隼人とは別人なのだと言っているようで、それが何よりも甲斐には辛い。どう言えば理解してくれるのかという答えを、甲斐は未だ見つけ出すことが出来ずにいる。そもそも甲斐自身が、まだ上手く同一人物であると認識できずにいるくらいなのだ。
いっそ別のものなのだと割り切ろうと思って出した提案を、こうもあっさりハヤトに否定されてしまっては遣る瀬がない。
「聞いて欲しい、隼人…。お前がどれだけ否定しても、俺にはやっぱり同じ隼人で…、だったら俺は、今のお前に負担にならない方を選びたい…。お前は…俺の顔を見るのも厭わしそうで…だから…」
「辛くなったから追い出したいという訳か」
「違うッ! 確かに…辛くないと言えば嘘になる…。けど、そうじゃなくて、お前が隼人とは別の人間だと言うなら、俺と隼人の関係じゃなく、お前との新しい関係を俺は作りたい」
何を言ったところで上げ足を取られる事は分かっていた。そうでなければ、隼人がハヤトのままでいる理由などないのだ。ハヤトは、甲斐が隼人の気持ちを知っていて、それを利用したことに腹を立てている。これはその腹いせでもあるのだろうと、そう思う。
けれど、それがきっかけでハヤトが生まれたというのなら、それもまた甲斐自身のせいなのだ。結局、厭われようと、誹られようと、甲斐が隼人を諦めきれない限り逃げ道などない。
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