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一昨日、二人は来日したばかりだった。現在はSDIで管理しているマンションに仮住まいの二人である。
今回甲斐がジェームズを通して渡した契約条件の中には、活動拠点が先ずは日本国内であるという項目があった。それをアンソニーは渋っていたのである。なのに語学学校などと意欲をみせているところを見れば、少しは腹を据えたのだろうかと甲斐には思えた。
「今はまだ、モデルというよりはタレントとして使いたいからな。片言でも日本語が話せた方が幅は広がる事は確かだ」
「それなんだが、やはりそこだけはまだ渋っているらしいな」
「まあ、仕方がないだろう。本人の希望はあくまでもモデルであってタレントじゃない」
一応甲斐の指示でアンソニーの為にSDI傘下の芸能プロダクションが幾つかの契約を既に押さえてあるが、九割方はモデルとしてというよりは外国人タレントと言った方がしっくりくるものばかりである。要は残りの一割を、アンソニー自身がものにできるかどうかなのだ。それでも、これまでどこの事務所にも所属できなかったアンソニーに対してみれば破格の条件だろう。
「ところでジェームズの方はどうだ」
「指示通りだ。まあ、渋ってはいたがな」
「渋ろうが何だろうが、アンソニーのためを思うのなら生活基盤を支えてやるのは当然の事だろうに…」
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