第3章 水妖記

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あっと言う間に太陽が顔を出した。 空気が澄んでいるのだろう。初冬の朝日は眩しかった。 淡い金色の光の中、セレ達はアルムの小屋の前にいた。 「お世話になりました。」 「楽しかったよ。」 「ありがとう。」 それぞれが感謝し合い握手を交わした。 別れの挨拶は短かった。 …名残を振り切るのには少し慣れて来ていた…。 白っぽい道を、元来た方角へと戻ってゆく。 最初に通った果樹園が見えて来た。 「あそこの林檎は美味しかったわ。また食べたい!」 ピアリが言った。 「君は本当に果物が好きだな。」 「お母さん譲りよ。お母さんとお父さんの出逢いのきっかけはスイカだったんだって。」 「…スイカが出逢い?どんな出逢いだったんだ?」 少し呆れ顔でセレが言った時だった。 …青っぽい光線がセレの胸を貫いた… 「?!」 セレは声も出さずにその場に崩れた。 「セレ様?!」 ナーガが抱き止めた。 「セレ?!」 「どうしたの?!」 青紫色に光る矢がセレの背中から胸を貫いて刺さっていた。 「セレ!」 「セレ様!」 …誰が呼んでもセレは動かなかった… - 第3部 完 -
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