第2章 いたずら狐と月桂樹

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「でも、最近セレは色々な表情を見せてくれるわ。」 ルスルスでは、今までセレが他人に決して見せなかった素顔を見られた。 …深い水を怖れる姿、家族への強い憧れ… …恥ずかしい事がバレた時にほおを赤らめたり、大好きな物に出逢った時に萌え顔になったり… …のびるまで温泉に浸かったり… そして、今、ナーガに腹を立てている姿も初めてだ。 「感情を隠さなくても大丈夫って思ってくれたって事だよね。」 ルルグも言った。 「うん…。何だか嬉しいわ。」 「うん。」 笑顔でうなずき合う2人の前で、ナーガは額に汗を浮かべながら必死にセレに言い訳をしていた。 「…人気の作家が書いているので、どんな本なのか興味を持っただけですって…本当にそれだけです。」 「だったら同じ作家の違う本を選ぶだろ。主人の選び方を間違えたと思っているから、そんな本を読むのだろう?!」 「いえっ!決してそんな事はありません…」 そんなセレとナーガを見てルルグは呟いた。 「『温泉を持ち歩ける魔法』でも編み出せばセレの機嫌が直るんじゃないかな…」
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