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セレ達は北上し、いよいよイズムルトに入った。
イズムルトとは現地の言葉でエメラルドの事だ。
ルスルスの密林とはまた違った緑色に覆われた国だ。森と山の合間に町や村がある。
「ロストークに似ているな。」
針葉樹の森を見て、セレが言った。
「そうね。落ち着くわ。」
ピアリもロストークで慣れ親しんだ空気を感じた。
程よく人の手の入った森は不気味さは無かった。その中を抜ける道も遊歩道の様で、心地よく歩くことができた。
最初に見えた集落は農村だった。
もう初冬という時節だが、果樹の収穫に忙しそうな人々がいた。
「あっ!セレ、りんごだわ!」
ピアリが指差した。
「本当だ。久々だな。」
ロストークを出て以来、初めてのりんごだ。セレも久しぶりに味わいたいと思い、分けてもらおうと声をかけてみた。
「こんにちは。」
声が届いた数人が振り返った。
「こんにちは。見かけない人だね。」
答えたのは中年の女性だった。
「旅の者です。見事なりんごなので分けて頂きたいと思って声をかけました。もちろんお代は支払います。」
「こっちのだったら、タダでいいよ。」
女性は足下の籠を持ち上げて中を見せた。
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