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ルスルス…密林の国…に入ってしばらく経った。
「密林の国って言うけど…レダリアの方がむしろ密林が多かったわね。」
「そうだね。現在じゃなくて、昔は密林だった、って事かなぁ。」
ルルグとピアリが言う通り、開けた平地が見えるだけだった。
「いや、近くに膨大な量の緑を感じる。森林がある筈だ。」
セレが言った。風の魔法を使えるセレは大気の変化には敏感だ。
植物の大群から吐き出される「息」を感じ取っていた。
数分も歩くと、その理由が分かった。
セレ達の正面、数メートル先は断崖絶壁になっていて、その下に広大な密林が広がっていた。
「なるほど、こういう事か…」
セレが特に気圧の変化などの違和感を感じないのだから、こちらが高いのではなく、向こうが低いのだ。
つまり、とんでもなく大きな窪地なのだ。ルスルスの国土のほとんどは海抜ゼロ、若しくはそれ以下だ。
道は大きく右に曲がって、急な下り坂になっていた。
密林の中に入って行く。
「わぁ、緑のトンネルだ…」
ルルグが頭上を見ながら言った。
木洩れ日を浴びながら、樹木の生い茂る下をくぐって歩く。
「不思議な感じね…」
ピアリも周りを見回していた。
木々は鬱蒼としていたが、特に気味の悪さはなかった。
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