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ただ、セレだけは、いつになく不安げな表情になっていた。
…まるで深い水の底を歩いている様だ…
何故かは分からないが、どうにも『水』は嫌なのだ。
浅い池や小川なら何とも無いのだが、自分の瞳の様な緑の色を帯びる程の深さになって来ると、嫌悪感を覚える。
深海などもっての外だ。潜った事が無いのに暗く冷たいイメージが脳裏に浮かぶ。
そして、得体の知れない
『生命の芯に刻み込まれた根源的な恐怖』
とでも言うべき感覚が湧いて来る。
水の魔法が苦手な原因かもしれない。
ナーガはそんなセレの心持ちに気付いた。
「セレ様、大丈夫ですか?」
「うん…この感覚は昔からのもので、どうしようもないんだ。でも耐え難い程ではないよ。」
ピアリとルルグは、何の事だか分からずキョトンとした。
「どうしようもない、って…何が?」
ピアリは、セレの顔色が冴えない事に気付いた。
「ランディールの家系は、水の苦手な方が多いのです。」
ナーガが答えた。
「そうなのか?」
セレも初めて聞く事だった。
「ええ。そもそも天空の竜が水を嫌うのです。その子孫であるあなた達が同じ感覚を持っていても不思議ではありません。」
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