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「そうなんですね」
また沈黙が訪れる。窓の外に見える駅前の風景に、人が増えてきた。
「……それでも、先輩にしかできない相談なんですけど……」
鈴木さんは、俯いて、緊張したように話しだした。
「私でよければなんでも聞くけど。確かに人の恋愛話を言いふらさないってところにおいては、恋愛相談向きかもしれないね」
「あの、私、……田中先輩のこと、好きなんです」
「ん?……私のことを?恋愛感情で?」
「はい。……あの、ごめんなさい。気持ち悪いですよね。ごめんなさい」
意外な展開だった。予想外で、想定外で、驚いた。
「相談があるって聞いてたのに、まさか告白されるなんてね」
思ったままが、口をついて出た。
「あの、その、騙したみたいでごめんなさい」
「すごく謝るね。恋愛に疎くて、この状況を想定できなかったのは私だから、鈴木さんが謝ることではないよ。あと、人を好きになってそれをその人に伝えることは、謝るほど悪いことじゃないと思うよ」
他人事みたいな口調になってしまうのは、私なりの防衛機制なんだろう。動揺せずに客観的に物事を見るために。
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