訪れた平和と新たな生活

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訪れた平和と新たな生活

 昔、ロカの父はこう繰り返していた。 「英雄とはどんなに辛いことがあっても、受け入れなければならない」  ロカはその言葉を片時も忘れなかった。その言葉があったから、苦しい戦いの末に、平和を勝ち取ることができたと思っている。しかし、その言葉が時として危険な状況を生むとは、ロカは思ってもみなかった。  魔物との戦いが終わり、平穏な暮らしを始めたロカは、国から多くの褒賞をもらった。それを機に、戦いから身を引き、褒賞を使って王都にほど近い商業都市で大衆食堂を営むことにした。なぜ大衆食堂なのか。大陸中の人たちは疑問に思っただろう。しかし、その答えは簡単だ。旅先の楽しみは食事だけで、色々な街の美味しい料理を網羅しているうちに、自分でも作ってみたくなったのだ。そしてそれができるのは、あらゆるものが流通する商業が盛んな街だ。ロカもそこに目をつけた。
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