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男たちのくだらない息抜き話に呆れていたユリは、次の話題に切り替えたのを見守ります。今度は向こうの若君の話です。手元にいる姫をどこへ嫁がせるかという話です。政略結婚が当たり前のこの時勢、大名同士の結婚は、合併を意味するものです。無用な争いをなるべく無くし、領民への統治を強固にするのに必要な布石だったのです。
どうやら、見合い話が一つまとまってきたようです。そうは言っても、本人同士は互いに会うことはありません。この水面下の縁談は、姫を他の城の若君へ嫁がせる事で決まったようです。その姫は、10歳を越えたばかりです。今なら、小学五年生です。ユリにしてみれば、まだ子供ですが、当時としては当たり前です。それどころか、もっと幼い子が嫁に出されていたのです。実母よりも姑と暮らす時期の方が長い当時としては、なるべく早く嫁がせる方が輿入れ先の風習に馴染むと考えられていたようです。
23歳のユリには、当時の年齢観と当てはめてみて、自分の方が子供っぽいと感じるのでした。そして、今の自分の歳が当時の年齢観で言うと、育児真っ盛りな若いミセスであることを理解して、いかに当時の寿命が短命であるか、その時代に生まれなくて良かったと感謝するのでした。当時としては、疫病や戦闘が起こると多数死者が出るために、平均寿命が縮むのは仕方ない事でした。
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