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玄関から帰宅したぼくを出迎えたのはゆり姉。ぼくが遊女の真似事をすることに怒ってくれたのは、九鬼さんだけ。両親、兄、ゆり姉、妹と揃いも揃って 「テルちゃん、短い経験が流星さんの文章に役立つかは、あなたの覚悟次第よ。心を込めて寄り添い、気遣い、微笑みかけて男たちを虜にしてしまいなさい」 義兄さんのファンだと思い知らされる。そしてぼくは 「・・・・・・・・・はい」 ゆり姉に逆らえない。仕事に忙しい両親に代わって、参観日、運動会と友人に遊びへ誘われても断り来てくれた人だ。幸せになって欲しいと切に願う。義兄さんのため、大見世の客になりきる九鬼さんの眼を、ぼくに向けさせるため頑張ろう 書斎にノートパソコンを持ち込み、課題を終わらせ、寝転がって天井の木目を眺めながら、出題するクイズを考えていた 「え?」 びっくりした。パッと開いた目に映る暗い部屋の中で、縁側の柱にもたれ、酒を飲む九鬼さんの、月明かりに照らされた横顔が見えたのだ。その横顔が少し動いて 「目が覚めたか」 九鬼さんがぼくに微笑する。ぼくは憤死しそう。内股の奥が見えるくらい乱れた着物の裾を、慌てて整えていると 「見てねぇよ」 くっくっ、九鬼さんが喉の奥で低く笑う
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