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食べる。という行為は色っぽいのだと、茶色く汚れた指を舌で、舐めとった九鬼さんに 「甘い、醤油にテルの味が染みてる」 教えられたとぼくは思う。舌で魚の身に触れ、唾液を混ぜ、喉の奥へと送り込む。伏せた睫毛が長いとか、上下する喉仏とか、酒をコップに注ぐ手つきとか、九鬼さんの動きすべてに目が奪われる 「緊張するな、そんな眼で見られると」 落ち着かない、そんな表情で苦笑した九鬼さんの、瞳が揺らぐ。もっと近くで見たくて、身を寄せたぼくは彼の吐く 「テル。誤解を招く行為をしてる自覚はあるか」 酒の匂いを、重く、ズシンとお腹に響く低い声と一緒に、顔に浴びた。眉間に深い縦皺を寄せた九鬼さんの息が荒い、少し、苦しそうな呼吸になってる。肩に手を置いた。ビクッと反応した九鬼さんの弾力のある肩に、お腹の底がゾクッとした 「九鬼さんのせいです」 「俺の?」 ぼくはおかしい、ゆり姉の白い太腿を目にした時よりずっと、欲求が高まってる 「少しだけ、でいいんです。ぼくに教えて下さい、大人の世界を」 そっと九鬼さんの胸に胸を押し付け、熱い呼吸を繰り返す。九鬼さんの荒い呼吸に合わせ、ぼくの息も熱く震える。暫く続いた沈黙のあと 「少しかよ・・・・・・っ」 吐き捨てるように言った九鬼さんが俺の腰を抱き、ゆっくりと、畳の上に横たわった
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