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「なに・・・・・・ソレ」 バカにしてんの、ぼくのこと。九鬼さんの胸に乗り、その肌を愛撫した結果がコレって 「テル?」 落ち着いた低い声もいまは、聞きたくない 何をしても、どうやっても、九鬼さんの目に映るぼくは保護すべき子どもでしかないのだと、その声に思い知らされる。立ち上がって縁側へ向かう。九鬼さんの温もりを感じるのが辛くなって縁側へ来たのに、着いて来ないでほしい 「少し冷たいな、風が」 そうですね、吹き下ろす風は九鬼さんみたいに冷たく、容赦なく葉を揺らしてる。風の音が九鬼さんの含み笑いに聞こえて、苛立つぼくのことは 「着物が乱れてる。整えた方がいい」 「ぼくには涼しいくらいの風です」 放っておいてくれ 「九鬼さんは奥で晩酌の続きをどうぞ」 縁側の柱に寄りかかり、片膝を立て、右膝を胡座をかくように折り曲げ、ゆっくり腰をおろす。さらっと流れた着物の裾はぼくの脚から、離れて落ちた。別に、露出狂のけがあるわけじゃない。熱を冷ましたいだけだ、空を見上げても、葉音に耳を澄ましても、ぼくの全神経は九鬼さんを追ってしまうから。どうして九鬼さんなんだろう、九鬼さんも、どうして義兄さんなのだろうと考えるのかな
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