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気遣いも、優しさもない舌がぼくの口の中を蹂躙する。息が苦しい、胸が針で突かれたように痛む。九鬼さんの重みにぼくの胸とお腹が圧迫され、動けない。片手でぼくの両手首を拘束し、もう片方の手で胸を弄り、チリッとした痛みを爪で残す九鬼さんが怖い 「下手だな、キスは教わってないのか」 別の世界から聞こえてくるような声だった。吹き荒ぶ北風が、生臭い匂いを運んできたような響きに震えて。キスを教わってって、え? 言葉の意味を理解しかけたぼくの喉に、九鬼さんの唇が触れた 「や・・・・・・っ、いや いや」 「どこが? 同じだろ。果汁を舐め取るように吸ってたじゃねぇか」 チクッ、チクッ、皮膚を吸い千切られているように痛い。なにコレ、痛みだけなら耐えられる。でも、九鬼さんに傷つけられた肌から甘い、樹液が染み出て、とろとろと全身に広がっていくよう。愛情のない愛撫に感じたくないのに、ぼくの中心は熱くなる。嫌だ、苦しい、心がキシキシと軋む。やめて、濡れた声で拒絶を繰り返すぼくの鎖骨に舌を這わし 「いつから関係を持ってたんだ」 触れたぼくの肌すべてに 「気付かなかったよ、そっちの興味はないと思ってたしな」 痕を残す九鬼さんがぼくの目を覗き込んできた。ゾクッと身震いする暗い眼は怖いのに、寂しくて、哀しい
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