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「それが、肌を曝しても羞恥を感じないほど慣らされてたとはね、守ろうとしてた自分が滑稽すぎて、笑えねぇわ」 手首の拘束が外された。胸の圧迫感がなくなり、温もった肌に冷たい風が吹き付ける。立ち上がる九鬼さんを呆然と見つめて、ハッとした。止めないと、九鬼さんをこのまま行かせたら、二度と会えない。そんな気がして、震える手足を叱咤して起き上がり 「・・・・・・って、くきさ まって」 呼びかけた。けど、九鬼さんはハンガーに吊した上着をとり 「じゃあな、開いた襟元を整えろよ」 ぼくに微笑む。微笑する九鬼さんは大人の九鬼さんで、さっきまでの、感情を剥き出しにした九鬼さんじゃない。縁側に脱いだ革靴へ目を向け 「テル。その靴はお前の足に合ってねぇよ」 足を突っ込んだぼくに苦笑する九鬼さんから、パカパカ、馬の蹄のような音を鳴らし距離をとり、首を横に振った 「もう遅い。ほら、月が沈んでる」 空を見上げた九鬼さんに何も言えないのは口を開けば、泣いてしまいそうだから。両の目に盛り上がる涙を零さないよう、歯を食いしばるぼくに 「もう寝なさい」 あんなことした後だというのに、子ども扱いしてくる九鬼さんに腹が立つ。慣らされてたとか、キスは教わってないのかとか、不本意な苦情をぶつけてきた九鬼さんに文句のーつも口にしなければ、ぼくの気が収まらない 「・・・・・・言ったのに 九鬼さんの せいだって」
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