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憧れていた。九鬼さんの隣に並び立てる大人に早く、成長したかった。成長すれば、大人になればきっと、自分に言い聞かせてはいたけどもう無理。この先、10年20年経ってもぼくは子どもで、九鬼さんは大人。親が子を見守るような愛情しか貰えない フジ棚の下で、ぽろぽろと零れるままに頬を濡らすぼくの後ろに人が近づいてくる。九鬼さんだろう。慌てて涙を手の甲で拭いながら 「すみません靴、お返しします」 言ったぼくの肩を強く抱き 「すまない・・・・・・年甲斐もなく、嫉妬した」 信じられない発言を、大きな溜め息を吐くような、微かに震える声で九鬼さんがした。ピタリ、びっくりしすぎたぼくの涙が止まる 「親に負担をかけまいと勉学に勤しむテルに恋する時間も、出会いもない。安心していた俺を嘲笑うように小さな白い尻を北村に向けてるし、俺の肌を舐めた後で前例があると言うし、性への興味を手近な男で経験してしまったのかと」 「そ、そんなことするわけない」 「・・・・・・だよな、分かってる。けど・・・・・・」 「けど? え、九鬼さん!?」 ずるずると崩れるように九鬼さんがしゃがみ込む。額にあてた手を滑らせ、髪をぐしゃぐしゃかき毟る九鬼さんの前にぼくも、おずおずと膝を曲げしゃがんだ
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